星野源『Live Tour“YELLOW VOYAGE”』2016.6.22 WED RELEASE!!

「まず、『YELLOW DANCER』ってタイトルからして悔しいよね。〈やられた！〉というかさ」

2015年12月12日、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』。まだリリースされてまもない星野源のニュー・アルバム『YELLOW DANCER』を特集した番組中、宇多丸はゲストに招いた星野を前にして、冒頭から激しい嫉妬を露わにした。

「本当に、絶妙なバランスなんだよ。こういうふうにブラック・ミュージックを昇華したJ-POPは、なかなかない」

宇多丸の手放しの賞賛は、きっと星野にとっても特別な喜びがあったにちがいない。
というのも、宇多丸はヒップホップ・アーティストの立場から、〈日本でブラック・ミュージックを表現すること〉に25年以上も真摯に向き合ってきた男だからだ。星野が辿り着いた境地の高みが、彼には身に沁みてよくわかるのだろう。

そんな宇多丸の賛辞に応えた星野のひとことは、今回のチャレンジに対する執念と達成感にみなぎっていた。

「ブラック・ミュージックとJ-POP。とにかく、その両方の手綱を離さないまま、絶対に最後まで行ってやるんだって」

星野源が4枚目のアルバム『YELLOW DANCER』で掲げたコンセプトは明快だ。それは彼のオフィシャルサイトに本人の言葉で記されている通り、〈「自分の趣味である（ソウルやジャズ、R&Bやジャンプ・ブルースなどの）ブラックミュージックと、己の音楽性の融合」を、全面的に追及したアルバム〉、ということになる。

制作の動機については、『YELLOW DANCER』のライナーノーツにおいて、やはり星野自らによって克明に書き綴られている。長期の休暇のなかで音楽から距離を置いていた2013年夏、深夜の散歩中にiPodから偶然飛び出したプリンスの“I Wanna Be Your Lover”が、彼に光明をもたらした。

「音楽が始まった瞬間から、夜の街が一気に朝を迎えたように、ギラギラと輝き始めました。（中略）それまで、どんな音楽を聴いても憂鬱でしたが、いつの間にか、こんなアルバムをつくりたいという希望が湧いてきました」

“I Wanna Be Your Lover”のあの小気味よいイントロに導かれた先に、音楽の歓びが躍動する『YELLOW DANCER』がすっくと立っているのは、とても合点がいく話だ。とりわけアルバムのイメージを決定づけているディスコ路線の3曲、“桜の森”と“SUN”と“Week End”をリリース順に追っていくと、最初に湧き上がってきた衝動をしっかりと握りしめたまま軽やかに階段を駆け上がっていくような連続性が聴き取れて、わくわくする。